上場準備会社がスムーズに監査契約するためのポイント
上場を目指す会社は、上場準備期間中に会計監査を受ける必要があります。
そのため監査法人と監査契約を結ぶことになります。
ただし、監査を受ける体制が整っていないと、監査契約を結べないこともあります。
監査契約が結べないのはどのような場合なのでしょうか。またどうすれば監査契約の締結ができるようになるのでしょうか。
上場準備会社が監査契約をスムーズに結ぶためのポイントを見ていきます。
監査契約ができない場合とは
「適正意見」が出るかどうか
監査する側の視点から、監査契約が結べるか否かのポイントを一言で言うならば、「適正意見を出せそうかどうか」です。
つまり、上場会社に準じた基準で監査をしたとき、問題ないと言えるほどの決算ができるか、ということです。
そのため、上場企業並みの決算を作成できそうだ、と監査法人が判断すれば監査契約に近づくことになります。
監査法人内での審査プロセス
監査法人が監査契約をする際、契約に先立って、監査法人内で受嘱審査と呼ばれる審査プロセスを経ることが通常です。
監査契約を結んで問題ないか、監査法人内部でのチェックを行うことになります。
監査法人によって多少の違いはありますが、いずれも監査基準に則って判断しなければならないことに変わりはありません。
それを一言で要約するならば、先ほどの「適正意見を出せそうかどうか」になります。
したがって上場準備会社としては、監査契約を結ぶため、上場企業並みの決算を作成する能力があり、適正意見を出しても問題ないことを示していくことになります。
監査法人によって審査の厳しさに違いはあるか
監査基準に則って判断するとはいえ、実のところ、監査法人によって上場準備会社の監査に関する方針はまちまちです。
積極的なところもありますし、消極的なところもあります。
また、上場会社の会計や監査に関する不祥事が世間を騒がせている場合などは特に、新規の監査契約が厳しく審査されます。
ただいずれにしろ、決算を作る体制が上場会社の基準に則っていないと判断されれば、適正意見が出ず監査ができないという結論になってしまいます。
特に設立からの年数が浅く管理体制の構築途上の会社の場合、監査法人を変えれば済む問題でないと考えた方がよいケースが多いでしょう。
上場会社として問題ない決算とは
決算について、税務上問題ないことはもちろん、以下のような点も問題になります。
- 会計処理が会計基準に則っているか
- 会計処理の根拠となる資料を作成、保管しているか
これらを実現するためには、以下のようなことが必要です。
- 日々の経理処理と決算整理業務において、会計基準に則った会計処理が行える体制を整える
- 日々の事業活動において、会計処理の根拠となる資料を作成、連絡、保管する体制を整える
つまり、日々の活動の中で客観的な記録を残し、保管することになります。
会計基準に則っていることを客観的な資料で確認できるようにする必要があるためです。
業務フローのポイント
業務フロー構築の例
上記で見たことをもう少し具体化すると、例えば以下のようなことになるでしょう。
- 会計処理の根拠となる契約書、請求書、納品書などを保管する業務フローを構築する
- 会計処理の根拠となる勤務記録、プロジェクトアサイン履歴などを保管する業務フローを構築する
- 会計基準を理解する人材を採用する
- 会計基準に則った経理マニュアルを作成する
決算業務だけでなく日々の業務フローも確認する
まず、決算業務だけではなく日々の業務フローの確認が必要になります。
会計処理の根拠となる情報をタイムリーに収集する必要があるためです。
会計処理の必要に応じて、日々収集する情報が十分かどうか確認することになります。
経理部門だけでなく事業部門の業務フローも確認する
また、経理部門だけでなく他の部門、特に営業部門における業務フローの確認も必要になります。
通常、契約書、請求書などの資料が作成されるのは、営業部門であり、必要な資料を確保して経理部門に連絡する必要があるためです。
その分、事業部門でのタスクが増えるため、できる限り効率的なフローを考える必要があります。
かといって必要な情報が得られないほどにフローを簡略化してしまうと、上場できなくなってしまいます。
そのため、業務フローの構築に当たっては、効率化と正確な情報収集のバランスを取る必要があります。
どの程度簡素化、効率化して良いかどうかの判断は、その業務に関する知識はもちろん、会計の知識とセンスが問われます。
外部に記帳を委託している場合
また、仮に外部の会計事務所等に記帳を委託していたとしても、会計基準を理解する人材の採用や、会計基準に則った経理マニュアルの整備が必要になります。
本当に会計処理に則って決算が作成されたかどうか、確認できる機能を社内に持つことが求められるためです。
委託先で適切に記帳が行われたかどうか、決算が会計基準に則っているかどうか、理解し確認するためのモニタリング機能を社内に構築することになります。
事業別の注意点
自社がどのような事業を行っているかによって、具体的に注意が必要なポイントは異なります。
ポイントを押さえた情報収集を行っている場合、監査契約を結ぶ上でもスムーズに話が進みます。
ソフトウェア開発を行っている場合
ソフトウェア開発に要した費用は、資産計上が必要かどうか判断する必要があります。
そのため、例えば以下のような点について、情報を残しておく必要があります。
- 各開発プロジェクトの内容、期間
- それに要した費用の内容、発生時期、金額
- エンジニアのプロジェクト別の勤務時間
商品の製造、仕入、販売を行っている場合
商品の仕入、販売を行っている場合、商品在庫の残高について正確に把握しておく必要があります。
そのため、例えば以下のような情報が重要になります。
- 商品種類
- 異動した個数
- 購入した金額、相手先、検収時期
- 販売した金額、相手先、出荷時期
- 製造にかかった費用の内容、発生時期、金額
- 製造担当者の商品種類別の勤務時間
サービス提供による収益を得ている場合
コンサルティングなどのサービス提供している場合、その売上を計上するためには、そのサービス提供が実際に行われたこと、完了していることなどを客観的に示す必要があります。
そのため、例えば以下のような情報が求められます。
- 契約書、発注書など
- 納品書、検収書、完了確認書など
- サービスの成果物たる報告書など
むすび
上場準備会社がスムーズに監査契約するためのポイントを見てきました。
全て完璧にできていないとダメというわけではなく、自社にとって効率的に行えるような対応を考え、実行できれば問題ないでしょう。
監査契約が難しいと言われていたが、業務フローの改善案を示して実行することで、監査契約が可能になった例もあります。
弊社では監査契約締結前の上場準備会社のサポートも行っております。
サポートをご希望の場合はお問い合わせ下さい。
お読みいただきありがとうございました。
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